「パリ症候群」 太田博昭

パリ症候群 (TRAJAL Books)
出版社: トラベルジャーナル (1991/08)


少し古い本ですが、パリを訪れる日本人が、
カルチャーショックで精神病にかかるケースが非常に多い事と、
その症例について細かく書かれています。

「議論説得型」の議論大好き個人主義のフランス人と、
「以心伝心型」の空気をよむ集団主義的な日本人では、
カルチャーが全く異なります。



自分の考えを伝えられないと無能とみなされ、
そこに存在しない物として扱われます。
攻撃に対する最大の防御は攻撃する事である、
と考えるフランス人と日本人ではかなりの距離感があります。
議論もせずにただ謝ると「理解不能」というレッテルを貼りつけてきます。
フランス人にとっての「美」とは常に論理的である事なのだそうです。

日本人は、他人と同じである事に安心感を覚えますが、
フランス人は、他人と違う事に安心感を覚えます。
だから、本当はAだと思っていてもBとかえしてくる。

そのような違いから、
海外旅行中のちょっとしたトラブルからパニックになり精神障害を起こしたり、
中・長期でフランス人と接する内に精神病にかかるケースなど、
これまで筆者が経験した様々な症例が数多くとりあげられています。

また、現地で精神病と診断されてしまうと、
現地での入院や治療が必要になります。
場合によっては、飛行機の搭乗を拒否されるケースもあり、
日本に帰りたくても帰れない状況に陥るそうです。

保険をかけないで旅行されていた場合など、
その治療や入院に関わる請求額は凄まじい金額になるそうです!
(これからは絶対保険かけようと思いました)

仕事という点においては、
日本はボトムアップ方式、フランスはトップダウン方式で、
管理者ほど能力が高く仕事が出来るのが当たり前で、
管理者が仏語も出来ず無能だとこてんんぱんに非難されるそうです。
日本のビジネス社会で有利に働く様な性格ややり方などは全く通用せず、
そんな環境の為、真面目な典型的な日本人タイプのサラリーマンは、
駐在中に抑鬱状態に発展する方もいるそうです。

そういえば、パリでフランス人に道を聞かれた事がありますが、
何故みるからに日本人の私に聞くのかな?と思いましたが、
この本の中で、
「フランス人は、パリのフランス人が冷たく、
外国人が優しいのを経験で知っていて道をきく」
とありました。
ちょっと笑えますね。

これは、1991年出版の本で、
女性が抱く憧れのパリとのギャップにより起こる精神病という話が中心ですが、
現在では、以前よりももっとフランスの情報が入りやすくなったため、
ギャップはだいぶ減ってる様な気がします。
ですので、「仏対日のコミュニケーションの違い」や、
日本の教育方法の問題点やこうしたらよいのではという筆者の考えに注目して読むととても面白いと思います。

日本は周りの空気を読む以心伝心型のコミュニケーションが得意で、
議論する事や反論・意見する事が苦手、
周りを見ながら対処していくから他の国からなめられる所など、
あまり変化はない様に感じられます。

最後の方で、年間労働時間比較というのが出てきましたが、
日本は2000時間
アメリカは1800時間
イギリスは1700時間
フランスは1600時間
ドイツは1500時間
だそうです。

日本とドイツでは、年間500時間も違うんですね~。

古本屋で購入してきたのですが、
なかなか読み応えのある本でした。

読み終わったので、Amazonに中古出品したら、即日売れてしまいました。
Amazonと楽天を調べてみましたが、新品の在庫はない様です。




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